(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

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鼻腔ケアも忘れずに


ようやく医歯薬出版とのお約束の抱えていた翻訳2本(Zemlinの解剖学・生理学とBhatnagerの神経科学第二版)の二番目が訳了しました.Zemlinは2月に出版予定であったのが,4月になり,結局5月に出るかどうかも怪しくなってきました.残っているのは「索引」の部分らしく,索引用語は既に,医学部病院の浮田先生,九州保健福祉大の山田先生,私の訳者全員がpick upの作業を終えていますので,出版時期は医歯薬出版にお任せ状態です.ご期待くださっていた方々には,大変申し訳なく思っております.


神経科学第二版の方は,第1版からminor修正と考えていたのですが,読み直してみると,本当に恥ずかしくなるような訳をしている部分がたくさんありました.それも含めて修正し,新しくBhatnager先生が加筆修正されたところ(実はこれが多かった,実質的には60-70%は新しい原稿でした)を加えて,作業した量は,ほぼ全部ということになってしまいました(毎度毎度,直ぐ安請け合いする悪い癖で,多くの人々にご迷惑をおかけしております).


さて,前回からの続きの口蓋帆咽頭閉鎖と口腔ケア・嚥下機能の関連話題です.


口腔ケアが,歯科疾患のみならず,嚥下障害の改善と栄養支援の防止に有効であることが知られて,一般の新聞やマスコミにもとりあげられるようになってきました.安全な嚥下運動のためには,姿勢の調整を始めとして多くの大切なことがあることをこれまでも書いてまいりました.口腔ケアや歯科治療を病院,施設,在宅で行なう際に,刺激によって生じる唾液や治療で使う水の誤嚥から呼吸機能を安全に確保することが要求されます.すなわち,突き詰めると,呼吸機能の安全性の確保というのは,嚥下臨床に他なりません.口腔ケアも同じと言えます.


口腔ケアを行なう際に,嚥下臨床から考えると,寝かせきりではリスクが高いことは当然ですが,もう一つ確認していただきたいことがあります.それは,「鼻は通ってますか」ということです.口蓋帆咽頭閉鎖機能の生理からは,通常,歯科治療でも口腔ケアでも,口腔内で水を使う時の舌と軟口蓋の運動は以下の様になります:

  • 舌と軟口蓋と接触している.
  • 鼻で呼吸するために,軟口蓋は口蓋舌筋によって舌の方に引き寄せられる.

そうです.舌と軟口蓋を接触させて,水の咽頭への流入を防止し,軟口蓋を下垂させて鼻での呼吸を補償しています.


さて問題ですが,鼻での呼吸がなんらかの理由で障害されているとどうなるでしょうか?たとえば,経鼻胃栄養チュ-ブが留置されていて,もう一方の鼻の通りが悪かったとしたら....ずっと乾燥した環境(とたえば入浴サ-ビスでは首から下の身体は洗っても,蒸気で鼻腔が蒸らせていなかったら...)でだったら,当然鼻は詰まっています.その状態での口腔ケアは危ないでしょうね.


鏡を鼻の下に当てるだけで鼻での呼吸路が開放しているかは判ります.


もしも詰まっているようでしたら,蒸気で蒸らすこともケアに入れても良いかもしれません.もっと良い方法もあるかもしれませんので,読者の方からの投稿をお待ちします.閉塞は,簡単には改善できないかもしれませんが,確認は確実にしていただきたいと思います.もしも鼻での呼吸路が閉鎖されているなら,口で呼吸できるように側臥位をとる,インターバルを短くする,という工夫が必要です.


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