機械を使った嚥下検査のことを書いています.今,代表的な機器を使った嚥下検査は,以前にも書いたように,アメリカでのspeech pathologyでの口蓋帆咽頭閉鎖機能の評価に関する研究の道を辿っています.内視鏡も,その一つです.
Speechは,articulation(構音)とvoice(声音)の二つを大きな因子(あと二つは,languageとfluencyです)としています.口蓋帆咽頭閉鎖機能が不十分であると,鼻音化すること,構音発達が未熟な場合には代償性の構音障害が生じます.したがって,非鼻音表出時の口蓋帆咽頭閉鎖の良否を正確に示すかどうかの評価が重要であり,内視鏡は通常の発話時でのそれを可能にしました.
では嚥下運動に対しては,どうでしょうか.内視鏡の特性を知らなければ,だまされるかもしれません.
何年も前に,嚥下障害の臨床の草分けであり,随分と多くの成書を出されている,非常に有名な先生が,日本摂食嚥下リハビリテ−ション学会雑誌に,内視鏡像上での参考点の位置を計測して距離を求め,機能との関係を論じておられる論文が載りました.いまでもそのような仕事は,国内外を問わず出てきます.かつてはspeechの領域でも,内視鏡が臨床で使われ始めた初期には,そのような仕事がありました.
右上の図は,紙に1cmの方眼を描いたもの(左端)を,2cm,4cm上方から眺めたときの内視鏡像です.内視鏡で見た方格は,
- 周辺が歪んでいる.
- 方眼が無ければ同じように見えても,眺める高さによって,その縮尺はおおきく異なる.
ということがわかります.すなわち,奥行きも正面も歪んでいるということです.
これは,内視鏡が,「病変の存在」を見るものであって「計測する」ことを目的としていないからです.
したがって,画面上で物差しを使って計測した場合に,信頼おける結果にはならないということです.
内視鏡上で,「わずかな貯留」「食塊が大きく動いた」というのは,内視鏡が,どの位置で,画面のどの辺りで見たかによって信頼できないということです.
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