(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

Team for Oral Unlimited Care and Health 限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団 http://www.touch-sss.net/ http://touch-clinic.jp/

IOE法を使うなら...


鏡開きも終わり,つい先週まで新年気分でしたが,またラッシュのような毎日が始まりました.お屠蘇気分も抜けない先週,お二人の意識障害の新たな患者さんを診察させていただきました.「お屠蘇」気分にも浸っている事態ではない御家族とお話をしておりますと,お一人お一人の御事情が様々で,時に滅入りそうになることもあります.私は溺れる者の「」程度のものかもしれませんが,自分の立場からできるだけのことをしたいと思っております.


二月に出版予定であった神経科学の第二版翻訳が,原著第三版が米国で出版されたため,急遽出版中止になりました.何人かの親しい方々には『二月に出るよ』などと空手形を打ってしまっていました.すみませんでした.昨年随分と時間をかけたのでショックのあまり,しばらくPCの上で文字を打つのが嫌になっていましたが,本来ならば最終の「つめ」をする時間で自著版のテキストの原稿に向かい,ようやく目処がたってきました.


いつものブログに戻ります.


今週診察しましたある患者さんです.3年前の脳梗塞の後,急性期病院でIOE(Intermittent oro-esophageal tube feeding 間欠的口腔食道栄養法)法を指導されたものの,その後自宅生活に戻られた後には,機能について評価されることなく2年間IOE法が継続されていましたが,どうしても口から食事を摂りたいとの方でした.


IOE法は,脳血管障害のために口から食事を摂ることが困難な方に,自分自身で細い栄養チューブを口から飲み下し,先端が食道内に留置されるようにして栄養剤を注入し,終了すると抜去する方法です.これにより,NGチューブに伴ういくつかの問題(咽頭感覚の鈍麻,チューブ周りの細菌バイオフィルムからの肺炎)を改善しようというものです.基本的には唾液の大量の誤嚥喉頭侵入)がある人ではなく,御自信で喀出できるような方が対象です.


この方の過去2年間の病歴には,唾液の誤嚥を伺わせる所見(不定期の38〜38.5度の発熱)がなく,頚部の聴診においても異常所見はありませんでした.すなわち,刺激の弱い唾液は良好に嚥下できているということであり,嚥下機能には問題がないと言えます.また軟口蓋の反射性挙上も問題ありませんでした.喉頭侵入があると湿性嗄声になりますが,それもない.きっと嚥下できるということです.


急性期にはIOE法は有効でしょう.しかしながら,生涯IOE法からは離脱できないのか,離脱できるなら,どのような条件がいるのか,何よりも長期的に機能賦活のプログラムを作る必要があるのではないかと思われます.


医学が進歩すると新たな悩みが生まれる』日野原さんの言葉です.



次回,この方に提示したプログラムを書きます.