(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

Team for Oral Unlimited Care and Health 限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団 http://www.touch-sss.net/ http://touch-clinic.jp/

11/23の山本さんへのSpringsunさんコメント(11/27)への追加コメント

私がお伝えするべきことを,springsunさんがコメントに残してくださいました.有難うございました.


誤嚥」には,嚥下時に症状が生じるいわゆる「aspiration」と症状が生じない「silent aspiration」があり,さらに口腔,喉頭蓋谷,梨状陥凹,咽頭に残留した残渣や唾液がゆっくり時間をかけて気管内に垂れ込んでいく「penetration喉頭侵入」も広い意味では「誤嚥」と言えます.臨床的な定義では,「誤飲」は「本来飲み込んではいけない異物(ボタン電池等)を消化管に飲み込むこと」で,「誤嚥」は「食べ物を気管内に誤って飲むこと」ということになります.この意味のために,食べ物でない「唾液」の「誤嚥」については注意が払われることが非常に少ないのが現状です.良くも悪しくも唾液に対しての理解が低いと言えます.


唾液自体は抗菌作用があり,嚥下時の器官粘膜どうしの接触抵抗を低下させる潤滑剤であり,咀嚼運動に応じて分泌されて食物を口腔内で「ミキサー食」状のドロドロにして嚥下しやすいようにしています.しかしながら,唾液は,体温と同じであるために,気管の入り口近くまで垂れ込んでも嚥下反射が惹起されにくいこと,口腔ケアが不十分であった場合には,口腔内の雑菌で汚染されるという性格を有しています.ここで私が言う『口腔ケア』とは,「ガーゼにイソジンを浸して拭う」とか「やみくもに歯ブラシでゴシゴシこする」等という,雑な清掃のことではなく,目標が明確にされたプロ(つまり歯科衛生士さん)による,定期的な評価に基づくケアです.


咽頭や口腔の感覚運動機能を低下させる原因,たとえば長期の経鼻栄養チューブや気管カニューレの留置,長期の非経口摂取や不十分な口腔ケアの場合には,汚染された唾液が垂れ込み,肺炎を惹起します.これは,絶食とは無関係に起こります.絶食を指示するのではなく,プロによる口腔ケアを強く勧めます.


右上の写真は,装着後2週を経過した後に抜去した「カフ付きカニューレ」を歯垢染め出し液で染めたものです.赤くなっている部分が歯垢(デンタルプラーク)で,80%が口腔内細菌です.カフは垂れ込みを防止するとされているにもかかわらず,膨らませたカフより下の部分にも歯垢が付着していることです.カニューレ入れているから安心なのではなく,入れているからこそ口腔ケアが必要なことです.


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