(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

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喉頭軟化症の診断とは

DocTak2007-04-23



ブログの更新をせめて5日に1回のペースにしたいと思っている舘村ですが,なかなか上手く行きません.


さて,今日診察した患者さん(3歳)です.
四肢に先天的に障害を持つお子さんですが,ある病院で生後直後に「喉頭軟化症」との診断を受けて,気管切開がなされました.通常の病院での当然のこととして,気管切開が行なわれたために当初はチューブ栄養でした.

たまたま1.5歳時に別の病院に入院中に,経口摂取の可能性について親御さんからコンサルテーションを求められました.乳幼児では経口摂取していない場合には,口腔に関わる原始反射が長期に残存することがあります(この原始反射は,成人でも脳障害などでは生じることもあります).これがあると食器が使えないために,脱感作が必要になります.

本児においても同様でした.そこで,脱感作のために口腔へのmildな刺激を歯ブラシで加えることや咽頭での嚥下反射の閾値を低くして(感受性を高める),良好に咽頭反射→嚥下運動を促す訓練をしました.その結果,現在では,発熱も無く,離乳期中期食も摂取でき,下顎の左右運動による咀嚼も見られるようになってきました.頚部聴診にても異常は見られません.すなわち,臨床的には,完全にカニューレを抜去して良い状態になりました.


しかしながら,当初に喉頭軟化症と診断された先生は抜去を拒んでおられ,入院下での暫間的な抜去の可能性についての検査もされていません.私には,当初の喉頭軟化症の診断が,どのような根拠でなされたのか不思議に感じています.基本的に生後直後の喉頭は著しく柔らかい軟骨です.もしもやや小顎症傾向であって,舌根が沈下しやすい状態ならば,上気道が閉塞して喉頭を含む気道全体が,吸気時の気道内の陰圧に負けて落ち込むような様子が見られると考えられます.入院下で,カニューレのタイプを変えて確認することが必要であろうと思います.もちろん,この子供さんでは,上気道を使って呼吸をしていないために,呼吸法が学習されていない可能性はあります.そのため,徐々にカニューレを細くするなどの経過処置を考慮しても良いのではないかと思います.


臨床現場では,脳の機能を含めて受傷直後から程度の差はあれ変化することを経験します.しかしながら,医療者が初診段階での診断に固執することで,対象者の社会復帰や参加が随分と障害されていることが多いのではないかと感じます.ある患者さんのご家族から,「遷延性意識障害」と診断されると「『誤嚥』はあるもの」と思われるのが残念です,とお聞きしたことがあります.


医療職として,常に,機能は介入の仕方で変化する,ということを肝に銘じておきたいと思っています.


写真は,先週末にmentor吉田 春陽先生の診療室ご一行様と一緒に淡路島へ行った時のSAでの写真です.私,強力な「雨男」ですが,吉田歯科医院の「晴れ男と晴れ女」に負けて,快適な天候でした.

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