今日は,富山県から遷延性意識障害の大山君(28歳,仮名)が来られました.東京で大学生であった時,サッカ−の練習中に意識不明となり,救急病院にて救命は行われたものの,意識については回復しませんでした.いわゆる,植物状態ということになりました.その後,富山県のご自宅に連れて帰られる折に,呼吸には問題が無かったにもかかわらず,飛行機での移動で問題があってはいけないとのことで,主治医判断で気管切開が行われました.栄養は誤嚥が怖いとのことで,非経口的に注入するようになりました.
筑波大の紙屋克子先生が大阪で講演をされた際,ご両親がお越しになられており,守口の吉田 春陽先生を介して紹介があり,小生が金沢で講演をするときにお会いしました.
経口摂取のための末梢神経系の障害は軽度であり,むしろ長期にわたって口を使っていなかったことによる口腔周囲筋や舌等の廃用性変化による影響の方が強いと考えました.
口腔ケアのメニュ−を考えて訪問の衛生士さんと親御さんにお願いしました.
3ヵ月ごとの再診では,本当に痒いところに手が届かないもどかしさがあるのですが,しっかりとご両親,衛生士さん,他の方々のケアが効いていたため,今日の再診では,口腔周囲の過緊張も消失しており,口腔ケアへの受け入れも改善され,原始反射は出なくなっていました.
遷延性意識障害の方では,その表情から,聴覚的には問題ないのではないかと思われる方が随分とおられます.積極的な経口摂取のためには,きっかけとして「好みの味」を使えます.そこで,簡易脳波計であるブレインモニタを用いて,お母さんに彼の好みであった食品について語っていただいているときの脳波をモニターしました.
酢の物,ビ−ル,ラーメン,イカの刺身....ま,「酒のアテ」のようなものがお好きであったようです.その時,安静時よりはるかに高い際立ったβ波が集団的に出現しました.食事の話が終わると再び低下していきました.
当初の主治医は,「脳は治らん」と宣告していたようですが,いかがなものでしょうか.脳の可塑性,これからの主題ですね.
あきらめちゃ,ならん.
明日,筑波記念病院にて紙屋克子先生たちの患者様の診察をさせていただきます.今日の大山君の話をお土産にして....
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