(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

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「基礎」と「臨床」は分けられるのか?


日本摂食嚥下リハビリテ−ション学会から帰阪しました.しばらくブログの更新をサボっておりました.

私が座長を務めさせていただいたセクションは,「基礎」というところでした.
いつも座長をお引き受けするときに不思議に思うことがあります.それは,私は臨床の人間であるのですが,「基礎」の担当を仰せつかることです.

嚥下過程で,多くの教科書が避けて通っている「空白」の経路があります.それは,随意性の口腔期から不随意性の咽頭期への移行段階です.この段階に関わるのは,軟口蓋と舌です.
私は,「人間の嚥下時」に軟口蓋や舌の運動が,どのように食物の物性(粘度,動的粘性,滑り速度)によって調節されるかが,咽喉越しの良い食品の開発や嚥下障害の診断治療に有効であると思っています.この軟口蓋や舌の運動の調節様相については,まだ全く判っていないといって良いと思います.


参考までに拙論文のリストを列記します.

  1. Takashi Tachimura, Kentaro Okuno, Maki Ojima, et al.: Change in levator veli palatini muscle activity in relation to swallowing volume during the transition from the oral phase to pharyngeal phase. Dysphagia, 21(1):7-13, 2006.
  2. 尾島麻希,舘村 卓,奥野健太郎,他:水分嚥下量と口蓋舌筋活動-ガムシロップを用いて-.日本摂食嚥下リハビリテ−ション学会雑誌,10(1):12-21,2006.
  3. Takashi Tachimura, Maki Ojima, Kanji Nohara, et al.: Change in Palatoglossus muscle activity in relation to swallowing volume during the transition from the oral phase to pharyngeal phase. Dysphagia, 20(1):32-39, 2005

 嚥下造影検査(VF)で判ったように教科書には出ていますが,VF検査は影絵であり,大きな運動体があるとそれに隠れた小さな重要な運動体の運動はわかりません.さらに,運動に左右差があると検出できないことや等尺性運動(運動体は動かずに筋肉だけが収縮する運動)は全くわかりません.これは,食物を送り込む運動が,力の分布状態を変化させることで行なわれることから,致命的と言わざるをえません.


 今回の学会では,私見として,単純に「とろみ」「ねばり」をつければ全て解決するかのような,これまでの暴論はさすがに少なくなってきたように思います.いくつかの発表では,ベッドサイドで簡便に粘性を測る機器の開発の発表がありました.私たちも明治乳業開発の簡易粘度計による共同研究の発表を行ないました.


Springsunさんにはコメントを頂戴しておりましたが,次回のブログで顎関節の問題を取り上げさせていただきます.
学会では,「闇夜に出会った同志さん(8月13日にコメント投稿いただきました)」に直接お会いできました.嬉しかったです.夜明けを見るために,また頑張りましょうね.

しかし,岡山は湿気の多い地でした.きっと,お肌には良いのでしょうね.


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