南崎先生,雑誌「ザ・クインテッセンス」での私のコラムへのコメント有り難うございました.
あのコラムで,ボタン訓練法について言及したのは,いろいろな教科書に,口唇閉鎖に問題があれば,無条件に「ボタンを口腔前庭に挿入して引っ張れば口唇閉鎖機能が向上する」というような考え方が記述されていて,利用されていることに危機感を持ったためです.
原因の解明と機能の評価に基づかなければ,場合によっては無効な訓練を長期継続することになり,クライアントも訓練する側にも無駄な時間を過ごすことになることに警鐘を鳴らしたかったためです.
たとえば,口唇閉鎖できない原因が,
- 口唇感覚の鈍麻なのか,
- 外傷後の拘縮なのか,
- 閉口することを阻害している口唇以外の原因なのか,
- 筋力が低下しているためなのか,
- 長期に経口摂取していなかったために廃用性に低下しているのか,
等々のいずれであるかの分析が必要なように思います.それに応じて負荷量(どのくらいの期間,どれほどの時間を1回当たりかけて,どのような強度で)を決める必要があると思います.
もちろん,従来のボタン訓練法が有効な症例もあると思いますが,やはり適応症は明確にすることが口腔を扱う歯科医療者の責務でしょうし,そのためには病態運動生理学にもとづいた検証が必要と思っています.
先生の対象の患者様は欠損歯が無いとのことですので,前庭にボタンを挿入するだけで,口唇にとっては負荷になっているわけです.さらに強い負荷をあたえるならば,ボタンの厚みを大きくすることで効果は増大すると思われます.
先生のHP覗かせていただきました.ヘッダはご近所の景色でしょうか?すでに春爛漫のように見えます.私の住む大阪池田は冬のままですのでうらやましい限りです.