(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

Team for Oral Unlimited Care and Health 限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団 http://www.touch-sss.net/ http://touch-clinic.jp/

EBM(Evidence Based Medicine:根拠にもとづく医療)は本当に科学的なのか?

DocTak2008-07-27



この十年間ほど,医療界にはEBMという言葉を出さないと「非科学的」であるという流れになっています.本邦では,根拠(論文になった報告)に基づいた医療でなければ科学的ではないとする考えかたです.なんとなく正しいような気がしますが......


これまで経験的に行なってきて良い成果が出ていても,論文になっていなければEBMではありません.


これは,もともとアメリカでの医療保険会社(Managed Care Company)が支払い基準(手短かに言えば,「お金を保険利用者に払い出さないための基準」)を決めるために,医師の「現場裁量の能力や治療方法の選択権」よりも「その段階での「権威」ある概念」を優先する考え方から産まれたとも言われています.


先日たまたま,ある施設での口腔ケアと栄養を担当されている方とお話しする機会がありました.その病院では,鼻腔栄養チューブを「CDCのガイドライン」に基づいて,2週間で交換していると言われていましたが,よく38度程度の熱が出ると言われていました.栄養チューブが通過する咽頭〜食道部分の表面には,歯垢がべったりと付着します.


このチューブに付着した歯垢によって生じる肺炎を防止するために,1週間での交換を勧めていますが,このようなことは,現場での常識であって,論文にはなっていません.もちろん,論文にすれば良いではないか,との意見もあるでしょう.そのためには,RCT(Randomize Controlled Trial)という方法,すなわち,ある大規模に集めた患者群では2週間で交換し,別の大規模集団の群では1週間で交換する,という研究群を作って肺炎の発症率を比較することが必要になります.これを「科学」というらしいです.

こんな研究は可能なのでしょうか,なぜチューブ栄養しているのかの原因や背景疾患が異なる数人の患者さんで得られた結果からの経験則で,新たな一人の患者さんを救うことが可能になる場合でも,CDCに基づいて肺炎を発症させるリスクを高くしている方が科学的であるというのは,なかなか私は理解しづらいところがあります.

このCDCガイドラインに基づく,というのは「報告された前例がない」という「私は実行しません」というのとよく似ているように思います.

写真は,24日に新潟で開催された全老健中堅職員研修会で口腔ケアのパネルディスカッションの帰路に,たまたま見えた富士山です.