(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

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成人病センターでの講演 保冷剤もなかなか使える

DocTak2007-03-17



昨日は大阪府立成人病センターNSTで講演をさせていただきました.同センターの外科部長の矢野先生からお誘いを受けて『病院における嚥下障害と口腔ケア』という話をしてまいりました.もともと矢野部長は本学の医学部第二外科(当時,現在の消化器外科)におられた上部消化管の外科医です.

医学部での看護師さんの看護研究で,食道癌術後に経過の良好であった患者さんの70%が経口摂取に問題を持っていることで,社会参加が障害されているという研究がありました.経口摂食の障害なら歯医者に相談ということで,1996年に現在大阪医療センター外科部長の辻仲先生が,歯学部の講義にお越しになられていた折に,現在山口大学医学部助教授の友人の森君を介して私の方に来られました.

食道癌などは,まったく見たことがなかったことで,観察調査をさせていただき,1997年から取り組みをさせていただきました.その折に病棟で手術術式等について教えていただいたのが,前出の辻仲先生,現在近畿大学医学部病院の病院長塩崎先生,そして矢野先生でした.


早いもので10年が経過しました.先月にクインテッセンス出版から『歯科臨床研究』という総合誌に,以前の取組みの成績と2001年での成績の比較を,同じ教室のS先生と発表いたしました.


さて,今日のトピックは患者さんに教えていただいた覚醒方法です.


大脳での機能担当部位についての古典的な絵『大脳の小人homunculus』はあまりに有名です.口腔ケアをすると意識が清明化するということで,よく使われます.子供では少ないのですが,遷延性意識障害の成人の中には,こちらの介入が気に入らないときにやや閉眼(半眼状態)されてしまう方がおられるように感じています.


ところが,私には,拒絶を示す軽度閉眼なのか,本当に意識レベルが低下して,そうなっているのかがわかりません.もしも意識レベルの低下であれば,嚥下訓練は少々危険ということになりますので,意識覚醒の方法が必要です.そこで,口腔ケアということなのですが,実際にずっと有効かというとそうでもないようです(これには興味深い富山のN君での経験があります).
なんとか意識レベルの状態を知りたいということで,そこで筑波の紙屋克子先生のチーム紙屋も使われる『ブレインモニタ』を使ってみています.


先日,K君がご両親と一緒にお越しになられました.ときどき意識レベルが低下するのですが,口腔ケアではなかなか賦活できませんでした.ブレインモニタを使ってみても,相対的なベータ波/アルファ波は1を越えませんでした.おもむろに,ご両親が取り出されたのが,ケーキなどを持ち帰る際に箱に入れてくれる,ビニールでパックされ,既に冷凍された『保冷剤』でした.それを彼の手掌に握らせた途端,一気に開眼し,モニター上でも覚醒が認められ,経口摂取訓練を開始することができました.


一つの方法ではあると感じました.


来週月曜日は加古川保健所での講演です.こどもたちがどのようにして口腔機能を獲得し,加齢でどのように変化するのか,という話をしてきます.

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