まるで團伊玖磨氏の「パイプの煙」のような感じで,いつ本筋へ行くのか??
以前,バギーに乗っておられる状態での食事の評価が困難であることを述べました.その理由のひとつは,『バギーは移動のためのもの』にあると述べました.
すなわち
−体幹をできるだけしっかりと保持するようになっているために,食事中の胸郭や腹部の運動性を低下させること.
−長時間バギーでの移動は背中と腰に体重が乗るために,線状もしくは点状に虚血部分が生じて不快感や疼痛が生じて姿勢が崩れること.を挙げました.
先週,診察した少年もバギーでの診察を続けていました.バギーでの移動時には,背中を支える「背板」を後方に傾斜させている場合が一般的です.この少年もそうでした.この姿勢は,移動時に頭部が前方に倒れないようにするために採るようですが,一方では常時後方に頭部を倒していることにもなります.
その結果,頭部を前に引っ張る筋肉の力が低下する場合があります.嚥下する際には「軽いうなずき」状態での頭部の位置が,喉頭運動を担保するために望ましいのですが,この頭位を,背板が後傾した状態でのバギーで採ろうとすると,丁度「腹筋運動」をする姿勢と同じになり,頭部を前屈させる筋に相当の筋力を要求します.一度,椅子を後傾させてみて体験してみてください.
私達は,声を出さない,出せない方々に,かなりの無理を強いているのではないか,と思うときがあります.また,違う分野の方々,例えばバギーを作っておられる方々では,どのように臨床現場の声を聞かれているのだろうか,私達の声は聞いていただけるのであろうか,と思うときがあります.
先週の少年では,辛うじて上肢を前に出し,脇の高さに調節したテーブルにもたれさせ,後ろから支持すると立位が採れました.そこで,バギーから立位に変えることで,頭位が安定した状態になり,バギーでの嚥下では上手くいかなかったのが,良好に閉口して嚥下が可能になりました.立位を支援することが困難であると思われていたのが,実はバギーでの頭位コントロールの方が大変であったということで,勉強になりました.
バギーでの食事には,最大の注意が必要です.とくに養護学校の先生方には,ご配慮をお願いしたいと思います.
Zemlinの翻訳,新口腔生理学の分担執筆が終わり,国立病院機構徳島病院神経内科・研究部長の野崎園子先生監修の神経筋難病の方々やご家族のためのテキストのお手伝いのための原稿も脱稿し,一段落がつきました.そろそろ私自身のテキストに取り掛かろうと思っておりますが,2001年に翻訳した『神経科学-コミュニケーション障害理解のために-』の第二版が出版されて,その翻訳をやっつけないといけない状態で,なかなか自分の仕事とブログの更新ができないのが少々悩みです.
かつて国立一期の入試が3月上旬に行われていてころ,この時期には大変寒くなったものです.発表までの2週間ほどの間に暖かくなっていったように思います.今日は入試がありました.あと数日で春になるのであろうと期待しております.
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