(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

Team for Oral Unlimited Care and Health 限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団 http://www.touch-sss.net/ http://touch-clinic.jp/

頂いたコメントの症例を参考に...


Zemlinの教科書の翻訳は終了したのですが,怒涛のように押し寄せる締め切りのラッシュで更新が著しくスローになってきております.


今の直面する締め切りは,松本歯科大学副学長で前大阪大学歯学部口腔生理学教授,森本俊文先生からご下命を受けた,「基礎歯科生理学」の発声の項です.以前の版では,音声生理学,音声病理学の専門家でない方がお書きになられていたので,歯科との関係が十分に表されていませんでした.これまで口蓋帆咽頭閉鎖機能と構音機能についての臨床と研究を行ってきた者として,歯科とspeechの関係に重きを十分に置いたdental related speechを書いております.今年末の出版予定です.



北野病院での講演をお聞き下さったkagiさんからご質問を頂いております.
頂いた膨大なコメントから抜粋してコメントをしたいと思います.


予め申し上げたいことは,このようなmailで頂くご質問での対象者の方の現症は,あくまでもご質問者の評価であって,厳しい言い方ですが「私の評価結果」ではないということです.すなわち,「誤嚥はない」とコメントにあっても,私がそれを鵜呑みにしてコメントはできない,ということです.


したがって,どうしても一般論に終始します.お許しいただきたいと思います.コメントの文章が膨大ですので,2回に分けてコメントします.今回は,再評価ポイントについて書きます.


では,ソロリ,ソロリと参ります.


kagi 『先日北野病院での先生のご講演を拝聴し大変感銘を受けました。臨床での問題を直接ご相談しても必ずや親身になってご教示いただけるものと思いご相談いたします。

Tak>有り難うございました.


症例は81歳の男性で既往に脳梗塞心不全があります。介護度は4で週3回のディサービスでリハビリもしています。


リハビリテ−ションの内容はどのようなものでしょうか,機能障害の詳細について評価がまず必要でしょう.患側はどちらで,四肢機能,体幹保持機能は?


現在も中ですが1分間両手で支えてやっとこさといった具合です。


少し判りにくいですが,「介護者が支えて体幹保持姿勢が1分間」ということでしょうか,それとも「ご自身が意識して体幹保持姿勢が1分間可能」ということでしょうか.再評価のポイントは,姿勢が崩れるとどのようになるのでしょうか,前後的に崩れるのか,左右的に崩れるのか,ということは如何でしょう.


介助者は自宅ではお嫁さんでベットで足を投げ出した状態で食べていたようです、明らかな「ムセ」はないようでしたがやはり「うがい」などの時ムセはあったようです。


この「うがい」は,上を向いての喉でする「ガラガラうがい」のことでしょうね.


2ヶ月で3度の肺炎(誤嚥)での入院があり


誤嚥」の診断は,誰によってどのような検査でなされたのでしょうか.入院に至る前の全身状態はどうであったのでしょうか.入院前に,原因のわからない38.0度程度の熱発はあったでしょうか.入院期間中の経過は,投薬内容や栄養摂取はどのようなものでしたでしょうか.


今回も入院中、食事は車椅子で足は着地した状態で机との距離も考え姿勢も出来る範囲で過度な後屈、前屈にならないようにし、うがいも上も向いてするのをやめさせ、食前後の口腔ケアでfollowしています、舌も舌苔もなく経過していますがやはり突然の高熱、CRPの変動を繰り返しています。見た目は上手く食事を取っているように見えるのですが...誤嚥のみが熱源かは不明ですが、抗生剤の投与をする事無く軽快、増悪を繰り返します。


講演内容を忠実に守っていただいたようで,感謝いたします.有り難うございます.
「突然の高熱、CRPの変動」の詳細が知りたいです.突然の高熱は,不定期に熱発するのでしょうか,頻度はどうでしょうか,何度まで上がり,下がるのはいつでしょうか,熱発時の医学的介入の内容はどうでしょうか,発熱前後での輸液や水分量はどうでしょうか,


頬部の口腔内からんぽストレッチと両側軟口蓋のストレッチ後に口腔ケアをしていますが同状態が続きます。


ストレッチが誤嚥防止の特効薬ではありません.あくまでも口腔咽頭感覚機能の閾値の正常化,拘縮傾向にある口腔周囲の筋の伸展,というような効果です.また,歯科医師の診断に基づいて,歯科疾患に対するPMTC(professional machine tooth cleaning)や歯石除去などは受けられているのでしょうか.ケアの際の姿勢はどうなのでしょうか,また患側を無視してケアをすれば,ケアの際に生じる刺激性唾液を誤嚥する可能性があり,ケアしていることで熱発を惹起するということになります.


口腔ケアの問題か嚥下指導が不適切なのか問題が多い症例で困っています。何か我々が再度確認すること、や具体的な方法アドバイスがいただければと思います。
口腔ケアに関しては、何度か直接指導受けていますが嚥下訓練はいま一つです(耳鼻科では嚥下障害みとめずとのことですが?)。
ご多忙中稚拙な相談で申し訳ありません。何卒宜しくご指導ください。』


長くなりましたが,ざっと気付いた再評価のポイントを列挙しました.次回は,「この81歳の男性」の現在の病態を「独断で」仮定したモデルを作り,介入する際の考え方を述べてみたいと思います.


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