(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

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全老健-熊本全国大会にて

先週,水曜,木曜と熊本で開催された全老健(全国老人保健施設協会)での全国大会のセミナー「摂食嚥下」の全老健側の講師として,基本的な用語と考え方について講義しました.


講師の一人は,黒田留美さんでした.彼女は高齢者ソフト食の開発で有名な方です.摂食嚥下療法に関わる栄養士職が注意するべきことについて講義されました.

その中で,最近の栄養士さんの傾向として,「『栄養評価』というと,すぐに「アルブミン値」等の検査値に一喜一憂する傾向がある」ことを挙げられておられました.若い人たちが「新しい情報」を鵜呑みにして,自分たちは先輩よりも優秀であるかのような振る舞いがあることを,見ていて気持ちの良いものではないと言われていました.

これを彼女は,愚痴に終わらせませんでした.


その一例として,アルブミン値の測定法の相違(BCG法,BCP法)によって,0.3-0.6g/dlの相違が生じることを明示していました.この幅は栄養障害のある人の評価をする上では大きいですね.すなわち,参考値にしておくべきであり,総合的に評価すること,すなわち,「その人」を見ることですね.体重,食事摂取にかかる時間,BMI,発熱,浮腫,脱水,などなどですね.

つい,新しいものを知っているのが素晴らしいことであるかのような錯覚に陥ります.新しい情報に敏感になるのは必要なことですが,それでこれまで培われた愚直な方法が駄目になったわけではありません.

かつての医師は心電図が無くても,聴診で心臓の状態を判断したのですから,まずそのような基本的な対象者の方から直接伝わる情報で診断できる必要がありますね.


彼女のことば,「アルブミンを知っていても,「裏ごし」の道具を逆さまに使うようじゃ,栄養はまかせられんわ」でした.「栄養が大事だ」と叫んでも,調理のできない,料理の作れない人間では,虚しいです.
歯科医師である自分に言い聞かせたいと思っています.



来週の日曜日は,COE市民フォーラムで,在宅摂食嚥下リハビリテ−ションと法人TOUCHの話をしてきます.
同じ週の金曜日には奈良で講演し,土曜日には恒例の守口市での摂食嚥下リハビリテ−ションと口腔ケアについての8年目の講演です.こちらは無料公開されていますので,守口保健所にお問い合わせいただければ良いと思います.7年前から遷延性意識障害で経口摂取されていなかったご婦人に昨年7月からとりくみ,今年の7月にはトマト羹,とうふ,おかゆ,かぼちゃが摂れるようになった経過も報告します.

次回は,今日の黒田先生の話から思い出した,公立御調病院の山口 昇先生(前の全老健の会長さんです)の話を冒頭にして,その後は気分で「口腔ケア」の話をしたいと思います.


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