お盆休み最後の日曜日でした.今朝は涼しく,日中も空は先週とは異なって入道雲は見られず,秋のような風が流れていました.気象情報では9月中旬頃の気温であったとのことです.
しばらくすると秋の学会シーズンとなり,その内に忘年会の話が出てきます.実に日のたつのは速いことを年々痛感します(歳のせいか?).
山口の南崎先生,毎度毎度のコメント,有り難うございます.共感していただけたことを嬉しく思っております.
定期的に,発達遅滞,四肢機能障害,てんかんを有する子供さんの経口摂取機能の支援を5年ほど継続しています.
この子供さんだけでなく,体幹保持に問題があると,通常は上半身を後方に傾斜させてバギーの背板で支えていることが多いことを目にします.このような姿勢を長期的に継続すると,下顎骨は後退位をとり,開口状態になります.経口的に食事支援を行なっても,上下口唇の閉鎖が行われないので拭い取りができませんし,下顎骨は後退位にあるために咀嚼は困難です.そうすると,ますます口唇の筋肉は廃用性萎縮に陥ります.
この子供さんでは,てんかん薬であるダイランチン様のお薬が用いられています.その結果,歯肉は肥大し,歯牙の植立状態は悪くなっています.上顎の前歯が唇側(外側)に張り出して,口唇閉鎖が「見かけ上」できないように見えます.しかし,この状態の原因は,上口唇の閉鎖力(実際には安静時筋力 トーヌスtonusですね)が,上下口唇閉鎖をしていなかった,上下口唇への運動療法がなされなかったことによって生じた廃用性萎縮によって低下したためです.この子供さんの開口と上顎前歯の外側への変位の原因は,口唇の筋力が低いためです.
ある立派な先生が,この子供さんのお母様に「上の口唇と下の口唇が接触しないのは,この前歯が邪魔しているためであり,この前歯を抜けば閉鎖できる」と提案されたそうです.これをお聞きして,しばらくの間,絶句してしまいました.抜歯をしても,閉鎖する力が無ければ,閉鎖できません.
結果として生じたこと(前歯が外側に変位)と原因(口唇閉鎖力の低下)が完全に入れ替わっています.形を修正することが機能を正常化するのではない,機能の評価は形の評価ではないことの原則を全く無視した無責任な発言と言わざるを得ません.
この子供さんには,変位した前歯の先端(切縁と言います)と下口唇を接触できるように支援すると良好に嚥下圧を咽頭側に振り向けることができるので,嚥下できています.
かの立派な先生が,「なぜ前歯を抜きたい」のかは理解できませんが,誤りであることをお母様にお伝えしましたところ,「私もそう思っていました」とのお返事でした.
月末には,全老健の全国大会が京都であります.医療研究会ではじめて「口のこと」についての施設での問題についてお話ししてきます.
写真は,北海道アルファトマムの樹齢300年のマザーツリーと名づけられている木です.