TOUCH基礎セミナーの残席数は60です.
先週の再診患者さんは,発達障害のある子供さん(田中健一君 6歳 仮名)でした.健一君は半年ぶりの再診でした.健一君には,生後直後からNGチューブが入っています.3年前に経口摂取が可能かどうかの診断を求められて来られました.当初,歯ブラシもスプーンも咬みこんでしまっていましたので,なかなかお母様も苦労されていました.長期非経口摂取児においてよく見られる咬反射に似た症状でした.
病歴では,熱発や肺炎の既往がないことから,嚥下機能には問題なさそうでしたので,刺激性唾液の生じる脱感作とストレッチを開始し,約2年ほどでコップから水分が連続的に飲めるようになりました.
両眼の視力が著しく低いため,食物の認知が進まず苦労していましたが,昨年,股関節脱臼のための手術で,ある病院に入院しました.その病院は,リハビリテ−ションでは有名な病院ですが,この健一君には知的発達に問題があるためSTは無駄であるとされました.
これまで私たちは,健一君の御両親には,「言葉のためではなく,口腔機能の廃用性変化を防止するために,歯ブラシによるストレッチや脱感作のマッサージが必要である」と説いていました.
その様な訓練には言語訓練に近似した方法が採れますが,残念ながら,その病院では否定的でした.
お母様が無理やり頼み込んで,入院期間中だけはしていただけました.
入院していることは24時間訓練のための準備をしているのと同じであり,効率よく訓練ができます.
そのため,入院中には,食事への興味も出てきましたが,外来になった途端に結局はSTは計画されなくなりました.
今,日本での嚥下障害の翻訳教科書の原著者の多くは,米国のSLPです.彼ら,彼女たちは,構音訓練に近い方法が嚥下障害に使えるために取り組んだのであろうと想像します.
日本のSTさんにも頑張って欲しいと思います.
私たちのTOUCHの取組みが,歯科総合雑誌の新聞クイントに取り上げていただけました.