(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

Team for Oral Unlimited Care and Health 限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団 http://www.touch-sss.net/ http://touch-clinic.jp/

抗痙攣剤

DocTak2008-05-13



しばらく第二回のセミナーの連絡や中間法人の社団法人への移行(今年義務付けられています)についての勉強で,更新をしておりませんでした.

さて,このブログでも何度か抗痙攣剤について書きましたが,またまた書きます.

広島から来られているN君は,鹿児島の大学生のときにミニバイクに乗っていて交通事故に遭い,意識障害となりました.

救急病院から回復期病棟では,抗痙攣剤が処方されていました.

その後,自宅に帰られましたが,抗痙攣剤についての処方内容は変更されること無く,経口摂取が上手く行かないとのことで,私どもを受診されました.

お話しをお聞きすると,

  • 呼びかけには反応するが,傾眠である
  • 頭部の支持が困難
  • 安静時に口唇が空いており,流涎が多い
  • 聴覚機能は問題ないが,口頭での動作の指示への反応を遅延する.
  • 咀嚼ができないので刻み食を口に入れるとこぼす.
  • しかしながら,これまで38℃程度の熱発はない.


この青年の問題は何でしょうか?


口腔衛生状態は問題無さそうです.
刻み食の問題は残るのですが,それよりも1〜5の症状が,「筋弛緩」している状態で見られる症状であるということです.御母堂にお聞きすると,自宅に帰ってきてからは,痙攣発作は全く無いとのことでした.


抗痙攣剤は「全身の緊張」を低下させます.「全身」です


すなわち,口唇閉鎖に関わる筋も喉頭運動の筋も舌の筋も,全身の筋ですので,tonus(安静時筋緊張)は低下します.

この青年には,抗痙攣剤を減量し,さらに口唇閉鎖を賦活するための咬合型のlip plateを装着し,さらに舌挙上運動と公害との圧迫力を増進するためにPAPを装着しました.

先々週,来院でしたが,オカァサマの言葉が嬉しかったです.最近,笑えるようになった,とのことです.

これを,私たちのケアのお陰,と言いたいところですが,おそらく大きな原因は抗痙攣剤の減量(実際には休薬)と顔面表情筋のストレッチや脱感作によって,顔面表情筋が動くようになったと考えられます.


抗痙攣剤を処方される先生方には,経時的な機能の変化や全身状態の変化を定期的に評価いただき,
「予防的な抗痙攣剤の投与」が反対に誤嚥性肺炎の危険性を高くすることに御配慮いただきたいと思っております.