- 下顎骨は顎関節窩でぶらさがっている.
- 巨大な筋肉の塊である舌は下顎骨体部についている.
- 咀嚼筋の収縮方向は上顎の前歯に向かうようなベクトルをもつ.
- 咀嚼時には,顎関節は幾分外れる方向(前下方)に向かう.
- 咀嚼時には,下顎骨は左右に動く.
以上から,仰臥位になると,どうなるのか,前回の図を回転させてみてください.
ただし,重力は常に下方向ですので...
舌の重みで下顎骨は顎関節窩の中の後面に押し付けられ,かつ開口する方向の重力を受ける.
この開口傾向になった顎骨を閉じようとするには,咀嚼筋は重力に抗して,前上方に力を出す必要があるため,
正立位よりも筋力が必要になる.
すなわち,左右に下顎骨を動かすことが難しくなり,上下的開閉運動になる結果,咀嚼はできなくなる.長期経過すると,咀嚼筋の廃用性変化が生じる.そして,食べられなくなる.重い舌は咽頭に沈下し,呼吸路を狭窄して呼気の再呼吸による炭酸ガス分圧の上昇によって傾眠となる.
寝たきりではない,寝かせきり老人はこのようにしても作られる.起座位が基本である.
週末,宮崎県での口腔ケア研修会で講演します.こんな話をしてきます.
Copyright c2006 Tak Tachimura All Rights Reserved.