(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

Team for Oral Unlimited Care and Health 限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団 http://www.touch-sss.net/ http://touch-clinic.jp/

ある少年の症例(久しぶりの紹介)

肋骨


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さて,久しぶりの症例紹介です.

ある男の子です.
ずっと喉がゴロゴロ鳴っている.
食事の際にムセると止まらない
という主訴で紹介されました.

先天性の筋疾患があり,すぐに頭部が前方に倒れてしまうので,
倒れないようにと,ジェットコースターのシートについている頭上から身体を押さえるバーのようなもので両肩と鎖骨が押さえられていました.症状は,最近特にひどくなってきたとのことでした.
この一年で随分と身長が伸びたとのことでした.

通常,成人で嚥下する時には,胸郭を拡張させて吸気し,呼吸を停止しています.いわゆるswallowing apneaです.胸郭をダイナミックに拡張させるには,肋骨が脊椎から斜め前下方に走行することが必要です.胸郭内には,生命維持のために重要な臓器である肺と心臓が収容されていますが,斜め下に走行する肋骨では胸郭は容易に外部からの圧迫圧で潰れます.


新生児や乳児では,これらの臓器が胸部への圧迫で潰れないように,肋骨が水平に走って,洗濯機の排水ホースのようになっています.この構造は,胸郭が拡張しきったような状態です.そのため,乳児の呼吸運動は,腹部臓器を動かして横隔膜を上下させることで行っています.この呼吸運動は効率が悪く,乳児の呼吸は「速く,浅い」呼吸になります.


成長に応じて肋骨は効率的に呼吸できるように斜め下方向に走行し,
運動は腹式運動から胸郭を拡張収縮させる胸式運動に変化していきます.胸郭を押さえると,吸気が不十分になり,喉頭侵入しそうになった唾液を喀出するための呼気量が少ないため,十分に気管をクリアすることができません.その結果,一端ムセると何度もむせます.


この僕ちゃんは,最近急に身長が伸びました.肋骨を拝見すると,
案の定,斜め下に走行するようになっていました.口腔ケアの際,食事の際には,胸部を開放することで十分に吸気できることが必要だろうと思います.