(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

Team for Oral Unlimited Care and Health 限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団 http://www.touch-sss.net/ http://touch-clinic.jp/

コメントでの御質問に応えて:


大阪STさん:

セミナーへのご参加ならびに早々のコメント+御質問を頂戴し,有難うございました.
セミナー後,京都大学での食品科学工業会の主催するシンポジウムへの参加や出張のためにRESできすにいました.申し訳ありませんでした.


nasal regurgitationについての御質問,まことに興味深いものです.


私の友人&mentorの一人,イリノイ大学のKuehnは,JSHR(Journal of Speech & Hearing Research)にかつて書いた論文があります.それは,口蓋帆挙筋活動の,speech,blowing,swallowing(空嚥下)時の口蓋帆挙筋活動を比較しようとしたものです.speechとblowingでは,最大努力でのblowing時の筋活動を100%」とすると,speechで要求されるのは約30-40%であるというのが一つの結論でした.この数字,面白くないでしょうか.先日のセミナーで呈示した「どれ位の筋力を使うと効率よく筋トレが可能か」というスライドを思い出されましたか?30%程度では筋力は増えも減りもしないということですね.嚥下障害の患者さんに無目的にSTを行なっても筋力は増えないということですね.


Kuehnは,空嚥下での筋活動を比較していますが,一貫した関係はありませんでした.彼らは,嚥下が最も高い筋活動になると思っていました(私信).


これは重大な落とし穴がありました.彼らの研究での嚥下作業は,唾液嚥下でした.これは負荷としては小さすぎて,食事のsceneを再現していません.
我々の研究では,嚥下作業を個人至適嚥下量とした場合,speechよりもはるかに高い筋活動になりました.すなわち,個人至適嚥下量程度である時には強い鼻咽腔閉鎖強度が要求されるということを示しています.


さて,御呈示の患者さんの場合,食事中に鼻水が出るとのことですが,残念ながらこれだけの所見では鼻咽腔閉鎖機能の問題と論じることは難しいかもしれません.それは,味覚性の鼻水などもあるからです.確認するのは,粘性や1回嚥下量を変えてみて,嚥下のタイミングと鼻汁の出方の一貫性を確認するのが良いと思います.一貫性があれば,鼻咽腔閉鎖強度が低下しているかもしれませんね.


今日は奈良県立医大での講義でした.口腔外科での栄養士さんからの質問が,興味深いものでした.今日のコメントの追加と医大でのお話を次回掲載します.