(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

様々な原因による食べる,話す機能の障害に対応するための情報を提供します

Team for Oral Unlimited Care and Health 限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団 http://www.touch-sss.net/ http://touch-clinic.jp/

上部消化管腫瘍か...TOUCHセミナー進捗状況


しばらく出かけてばかりで更新ができませんでした.読者の皆様,申し訳ございませんでした.


TOUCHセミナーのお申し込み,有り難うございます.もうあと30席程になりました.


ある病院でのある日の初診患者さんです.


今年5月のある日,突然食べ物が喉を通らなくなり,まるで窒息しそうになったとのことで,近在の某病院を救急で受診されたそうです.その折,症状から脳梗塞が疑われ,MRIを撮影したのですが何も所見が無かったとのことで,その日は帰されました.

しかしながら,その後に同症状は継続,いや重度化し,窒息に近い状態から水分を摂取するとむせるようになりました.ある方の紹介で,精神科を受診したのですが,診察開始5分で「うつ病」と診断され,ドグマチールが処方されました.

やはり症状が改善しないので,前述の病院の耳鼻咽喉科を受診したところ,内視鏡で「咽頭と食道の入り口が狭くなっている」との診断(?)がありましたが,何もなされませんでした.その後,どんどん症状が悪化し,嚥下できても直ぐに嘔吐するようになり,同じ病院の消化器内科を受診したところ,大腸にポリープがあるが,胃には何もないと診断され,そのままになりました.


その方の友人が歯科医であり,たまたまその歯科医院に勤務されていた方が,「嚥下障害なら」ということで,私の方に紹介くださいました.


診察して直ぐにわかったことは,

  1. 経時的に重症化している
  2. 常に同じ部位でひっかかる
  3. その部位を明確に指示できる
  4. なによりも咽頭と食道が狭窄している
  5. これまでに咽頭-食道については検査を受けていない

よいう事実でした.

とくに,「突然自覚した嚥下時の通過障害」から,これは咽頭〜上部消化管での悪性新生物ではないかと疑い,直ぐに消化器外科を紹介させていただきました.


嚥下障害の臨床は深いですが,残念なことは,多くの立派な医師の診察を受けられて「状態の説明」はあったにも関わらず,「だから,何だ」の診断が全くされていないことでした.なぜ,自覚症状から上部消化管を疑わなかったのか....


今年に入り,STの国家試験では,「歯科医-内視鏡」の組み合わせが誤りであるとか,歯科医が内視鏡で診断するのは誤りであるとかのキャンペ−ンを張っておられる方々が出てきました.

その方々に申し上げたい.内視鏡を鼻から挿入して軟口蓋〜咽頭の運動を,世界で初めて観察したのは,私の院生の時の恩師である宮崎 正先生であり,彼は,そのことでお国から勲章を貰っています.また評価することと治療することは全く別の話であるということを申し上げたい.口腔外科手術をする際に胸のレントゲンや血液検査をするのは当然のことであって,内視鏡で評価することと内視鏡手術をすることとは全く意味が違うということにお気づきになっていただきたいですね.

無駄な医療行為があったとしても,彼の疾患が早期発見早期手術によって治療され,社会に復帰されることを心から祈っています.